こんにちは。大阪市の不動産専門の広告代理店、株式会社アド・コミュニケーションズの代表の中原です。弊社スタッフブログを約2年振りに再開させていただきます。今後ともご愛顧の程、宜しくお願い致します。
さて、今回のエントリは今一番お問い合わせが多い課題に対するお話しです。現在、弊社の元には毎月のように、全国のビルダー様や工務店の社長様から、悲痛な叫びにも似た相談が寄せられています。「資材価格は高止まり、職人の手間賃も上がる一方。それなのに、お客様の財布の紐はかつてないほど固い。利益を削ってなんとか価格を据え置いたのに、それでも現場が動かない…」
はい、正直に申し上げますと、2025年以降の不動産市場において、これまでの成功体験であった「価格訴求(安さ)」は、もはや通用しないどころか、ブランドを毀損する「毒」になりつつあります。金利上昇、資材高騰、そして実質賃金の停滞。この三重苦の中で、消費者の心理は劇的に変化しました。しかし、売り手である我々不動産業界の多くは、未だに「安ければ売れる」という幻想から抜け出せていないように見受けられます。
本日は、広告代理店として数多くの販売現場とデータを見てきた私達が、「なぜ価格を抑制した建売が売れないのか」、その残酷な理由と、そこから脱却するための生存戦略を、現場のリアルな声と共にお話しします。
耳の痛い話もあるかもしれませんが、これが市場の現実です…
なぜ、「価格を抑えた建売」がこれほどまでに売れないのか?

まず、構造的な問題から目を背けるわけにはいきません。ここ数年、皆様も肌で感じておられる通り、建築コストは異常なペースで上昇しました。ウッドショックに始まり、アイアンショック、住設機器の値上げ、そして物流コストの増大。
この状況下で「販売価格を以前の水準(あるいは近隣競合より安く)に抑える」ためには、どうすれば良いでしょうか?答えは一つ。「仕様(スペック)を劇的に落とす」か「建物の面積を小さくするか」「土地を細分化してグロスを抑える」しかありません。
「価格維持」のために犠牲になった「住宅の本質」
多くの現場で、以下のような「調整」が行われているのを私は見てきました。
- 外壁材(サイディング)のグレードを最低ランクに落とす。
- サッシを樹脂からアルミ樹脂複合、あるいはアルミに戻す。
- 軒の出を極限まで短くし、屋根材を安価なものに変更する。
- 植栽やフェンスなどの外構工事を「オプション」として省く。
経営判断としては理解できます。しかし、これは「安く提供する」努力ではなく、「商品力を下げて価格を維持する」という、お客様にとってはメリットのない調整です。
お客様は「安かろう悪かろう」を何よりも恐れている
現代の消費者は、非常に賢くなっています。彼らは「資材が高騰している」というニュースを知っています。その中で「なぜこの家は、周りより安いのか?」と考えた時、彼らが導き出す答えは「お買い得だから」ではありません。「見えないところで手を抜いているからだ」という疑念です。
特に金利が上昇局面に入り、「一生に一度の大きな買い物」に対する失敗への恐怖心は極大化しています。その心理状態で、明らかにコストダウンが見え隠れする物件を見せられた時、お客様は「安くてラッキー」とは思いません。「この家を買って、将来メンテナンスコストで苦労したくない」と、防衛本能が働きます。これが、価格を抑えても反響が鈍い最大要因です。
【現場のリアルな声】お客様は「価格」ではなく「ここ」を見て離脱する

では、具体的に現場では何が起きているのか。弊社がクライアント様のモデルハウスにお邪魔し、来場者アンケートや営業担当者へのヒアリングで収集した「生の声」をご紹介します。ここには、広告のキャッチコピーでは解決できない、深刻なギャップが存在します。
「YouTubeで勉強したんですけど…」という恐怖の質問
最近の一次取得層(30代〜40代前半)は、住宅系YouTuberやInstagramなどのSNSで徹底的に予習をしてから来場します。彼らの知識量は、一昔前の素人の比ではありません。
現場の営業マンから聞いた、成約に至らなかったお客様の言葉です。
- 「窓枠、これ樹脂じゃないですよね?結露しませんか?」
かつては気にする人など稀だったサッシの仕様が、今や断熱性能のバロメーターとして厳しくチェックされています。「複合サッシです」と答えた瞬間に、お客様の顔色が曇るのが分かるといいます。 - 「C値(隙間相当面積)は測定されていますか?」
建売住宅で気密測定まで行っている物件は少数派ですが、お客様は「高気密高断熱」を当たり前の基準として求めてきます。これに対し「測定していません」「公表していません」という回答は、即ち「性能に自信がない」と受け取られてしまいます。 - 「リビング16帖って書いてありますけど、家具置けなくないですか?」
価格を抑えるために延床面積を詰め、廊下を無くしてLDKに含めるような間取りが増えました。しかし、実際には通路部分を含んでの「16帖」であり、有効スペースは10帖程度。お客様はモデルハウスのような広がりを期待して来場し、現実の狭さに落胆して帰っていきます。 - 「ホームインスペクション頼んで良いですか?」
実は、これは最近マイホームを買った弊社スタッフの生意気な要望の生の声です。こんな事は当然の様に当たり前に言うんですね。
私の様な年代(50代後半)の人間には。なかなか言い出せないw
「比較検討」の対象が変化している
また、競合に対する認識のズレも致命的です。皆様は近隣の「新築建売」を競合と見ておられるかもしれませんが、お客様は違います。「この新築を買うくらいなら、駅近の中古マンションを買ってフルリノベした方が良くない?」「性能が低い新築より、築浅の中古戸建の方がマシだよね」。
現場では、このように「新築プレミアム」が剥がれ落ちた会話が頻繁に聞かれます。価格を抑えただけの低スペックな新築は、質の高い中古住宅やマンションとの比較競争に負けているのです。
広告データが暴く残酷な真実:クリックされても反響にならない理由

私たち広告代理店の視点から、数字に基づいた分析を提示しましょう。感情論ではなく、データは嘘をつきません。価格訴求型の広告戦略が、いかに効率を悪化させているかが如実に表れています。
「安さ」で集まるのは「買えない」お客様ばかり
「月々6万円台から!」「大幅値下げ!」といったバナー広告は、確かにクリック率(CTR)は高い傾向にあります。しかし、そこから成約に至る確率(CVR)は、2023年比で約40%も低下しています。
なぜか。安さを全面的に打ち出した広告に反応するのは、「予算がギリギリのお客様」だからです。彼らは購入意欲こそ高いものの、属性(年収、勤続年数、既存借入)の問題で住宅ローンの審査に通らないケースが非常に多い。
営業担当者がどれだけ時間をかけて追客し、現地案内まで漕ぎ着けても、事前審査で否決となり、徒労に終わる。この「無駄な工数」が現場の疲弊を招いています。
この現場での営業さんの嘆きが、実は一番多い気がします!
ポータルサイトでの「埋没」と「即離脱」
SUUMOやLIFULL HOME’Sなどのポータルサイトにおいて、詳細ページ(物件詳細)の平均滞在時間が短くなっています。
- 写真のクオリティ不足: コスト削減で外構が土のまま、あるいは室内が空っぽの写真。
- スペック情報の欠如: 耐震等級や断熱等級の記載がない(=等級が低い)。
お客様はスマホでスクロールしながら、数秒で「ナシ」を判断します。価格が安くても、写真から漂う「チープさ」や、情報の「不透明さ」を感じ取ると、二度とそのページには戻ってきません。「アクセス数はあるのに問い合わせが来ない」とお嘆きの経営者様。それは、お客様が物件を見ていないのではなく、「見て、ガッカリして、ないと判断し、去っていった」結果なのです。
金利上昇局面における「買える人」の心理変化

ここで視点を変えて、今、実際に成約している「買える層(パワーカップルや属性の良い層)」の心理を分析します。彼らは金利上昇をどう捉え、何にお金を払っているのでしょうか。
「イニシャルコスト」から「ランニングコスト」への転換
かつての低金利時代は、「借入額を増やしても月々の支払いはさほど変わらない」という感覚でしたが、今は違います。金利負担が増えるからこそ、彼らは「トータルコスト」に敏感です。
- 光熱費: 「電気代が高騰しているので、ZEH水準の断熱性能で月々の光熱費を抑えたい」
- メンテナンス費: 「10年後に外壁塗装で100万円かかるより、高耐久素材で30年メンテナンスフリーの家がいい」
つまり、目先の物件価格が200万円安くても、光熱費と修繕費で将来的に赤字になるような「低燃費でない家」は選ばれません。「高くても、後でお金がかからない家」こそが、今の賢い消費者が求める「コスパの良い家」なのです。
「消費」ではなく「資産防衛」としての住宅購入
インフレ懸念がある中で、資産価値の維持(リセールバリュー)は必須条件です。
- 立地適正(駅距離、学区)。
- 可変性のある間取り(ライフステージの変化に対応)。
- 長期優良住宅の認定(税制優遇と売却時の評価)。
これらを備えていない「ただ安いだけの建売」は、将来的に「負動産」になるリスクが高いと判断されます。皆様がターゲットとすべき「ローンが通る層」ほど、この資産価値に対してシビアな目を持っています。彼らに響くのは「値引き」ではなく「資産価値の証明」です。
この難局を突破するための「高付加価値化」戦略

現状分析が長くなりましたが、ここからは「では、どうすれば売れるのか?」という解決策をお話しします。すでに完成してしまった建売のスペックを今から上げることは不可能です。しかし、「伝え方」と「見せ方」を変えることで、価値を再定義することは可能です
ホームステージングで「生活の質」を視覚化する
「狭い」「質素」という第一印象を覆すには、プロによるホームステージングが不可欠です。
営業リーダーが担当した案件で、半年間売れ残っていた建売物件がありました。LDKが14帖と狭く、内覧客の反応が悪かった物件です。そこで、あえてダイニングテーブルとソファを配置し、さらに「朝食の風景」や「夜のリラックスタイム」を想起させる小物(開いた本、コーヒーカップ、ブランケット)を配置しました。
すると、お客様の反応が「狭い」から「こぢんまりとして落ち着く」「夫婦二人にちょうどいい」へと劇的に変わったのです。何もない空間はアラが目立ちますが、家具が入ることで「暮らし」に目が行きます。「50万円の家具代・設置費」をケチって200万円の値引きをするくらいなら、ホームステージングに投資すべきです。
弊社では、ホームステージングサービスをBellmaison(ベルメゾン)でご提供しています。
断熱等級が最高等級でもないなら、無理に性能で勝負してはいけません。その代わり、その家ならではの「暮らしのメリット」を言語化してください。
ご予算に合わせた、多数の実績がございます。
「スペック」ではなく「ベネフィット(恩恵)」を語る
- 共働き世帯への訴求: 性能ではなく「家事動線」を売る。「洗濯から収納まで5歩で完結する間取り」であることを図解入りで解説する。
- 子育て世帯への訴求: 建物ではなく「環境」を売る。「公園まで徒歩1分、小学校まで歩道のみで通学可能」という安心感を、親の目線で情熱的に伝える動画等を作る。
弊社では、物件ごとに「ペルソナ(想定読者)」をたった一人に絞り込み、その人の悩みを解決するようなキャッチコピーに変更することで、問い合わせ数を倍増させた実績が多数あります。
広告のターゲットエリアを「ずらす」
地元の需要が枯渇している、あるいは地元の相場観では「高い」と判断されている場合、広告の配信エリアを広域に広げる戦略が有効です。
例えば、中心部から電車で1時間のエリアなら、都内(市内)在住者にとっては「信じられないほど安くて広い家」に映る可能性があります。「都内(市内)で狭小マンションを検討しているあなたへ。同じ通勤時間で、庭付き一戸建てという選択肢があります」
このように、比較対象を近隣の建売ではなく「都心の狭いマンション」に設定し直すことで、スペックの弱点を「広さと価格のバランス」という強みに変換できます。
まとめ:生き残るために、今すぐ「安売り」をやめる勇気を

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
非常に厳しいことを申し上げましたが、これが今の不動産建売市場のリアルです。日銀の基準金利引き上げ、4月から更なる住設や資材高騰と今後も厳しい状況が予測されます。その中で「価格競争」というリングに上がり続けることは、経営体力を消耗させるだけでなく、社員のモチベーションをも低下させます。「価格を抑えた建売」が売れないのは、お客様が「安さ」よりも「失敗しないこと(=確かな価値)」を求めているからです。
今日からできることは有ります。
- 安易な値引きをやめる。 その原資をステージングや魅力的な写真撮影に回す。
- 広告のメッセージを変える。 「安い!」ではなく、「この家なら、こんな豊かな暮らしができる」という提案に切り替える。
- 現場の声を吸い上げる。 営業担当者が聞いたお客様の「断り文句」の中にこそ、次の商品企画や販売戦略のヒントがあります。
私たち広告代理店は、単に情報を流す業者ではありません。皆様の物件が持つ「隠れた価値」を見つけ出し、それを必要とするお客様に「正しく届ける」パートナーです。
例えば、「反響がないから価格を下げる」前に、一度立ち止まってみてください。その200万円の値引き分で、家具を入れ、プロのカメラマンを呼び、LP(ランディングページ)を作り直してみてください。物件の価値が驚くほど変わり、今までと違う層のお客様が反応してくるはずです。
もし、今の販売戦略に行き詰まりを感じておられるなら、ぜひ一度、膝を突き合わせてお話ししましょう。データとクリエイティブの力で、その閉塞感を打破するお手伝いをさせていただきます。
最後に:少しだけ宣伝させて下さい。

弊社では住宅業界に25年以上携わってきました。苦楽を共にさせていただいた業界関係の皆様方と将来的に持続可能な事業を模索して参りました。そこで、今春より近畿圏を中心に、販売代理+広告代理+仲介をワンストップでご提供できるJV(Joint Venture)事業を立ち上げる事となりました。
経験豊富なパートナー企業様と新たな「価値の創出」をご提供できると確信しておりますので、「営業が不足している」、「集客に困っている」、「物件の相談相手が欲しい」と感じておられる企業様(事業主様)より、お問い合わせをお待ちしております。
無料リモート相談も開催していますので、お気軽にご連絡ください。
最後までご拝読いただき、誠にありがとうございました。