後悔する前に対策!不動産の公正競争規約を広告会社が徹底解説
不動産広告を出す際には「日本一の○○」「激安」など、不動産をより良くみせられる表現を使いたくなりますよね。
しかし、不動産広告には「使ってはいけない表現」があるので注意が必要です。反対に、「必ず表示しなければならない情報」もあるため、広告出稿の前には不動産広告のルールを確認しておかなければなりません。
今回は、不動産広告で禁止されている用語をご紹介していきます。
目次
不動産広告のルール
不動産業界に限らず、広告を出す際には消費者が不利益にならないよう、一定のルールを守って広告を出さなければなりません。
不動産業界では消費者を保護するために、「宅地建物取引業法」、「不当景品類及び不当表示防止法」、「不動産の表示に関する公正競争規約」などで不動産広告の規制ルールが定められています。
宅地建物取引業法
宅地建物取引業法の第三十二条では、誇大広告の禁止について定めています。
誇大広告とは、商品やサービスが実際よりも優良であると消費者に誤認させるように表示した広告のことです。
宅地建物取引業法の第三十二条では、下記の内容について誇大広告することを禁じています。
- 不動産の所在
- 不動産の規模
- 不動産の形質
- 現在・将来における利用の制限
- 現在・将来における交通その他の利便
- 金銭の代金・借賃等の対価の額
- 支払方法
- 交換差金に関する金銭の貸借のあっせん
第三十二条
宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
引用:e-Gov
不当景品類及び不当表示防止法
不当景品類および不当表示防止法とは、消費者を保護するために内閣総理大臣が広告などに対して制限や禁止を定めたものです。
不動産取引においては、以下のようなことを定めています。
- おとり広告(実際に取引できない不動産)の表示を禁止
- 割賦販売や不動産ローンなどの金利は実質利率を表示しなければならない
- 全く欠けるところがないこと、全く手落ちがないことを意味する用語の使用禁止
- 徒歩による所要時間は、道路距離80mにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示しなければならない(1分未満の端数が生じた場合は1分とするなど
- 新築と表示できる不動産は、建築後1年未満、かつ未入居のものに限る
など
不動産の表示に関する公正競争規約
不動産の表示に関する公正競争規約については不動産業界が自主的に定めた広告規約であり、全国の「不動産公正取引協議会」によって公正競争規約制度が運用されています。
この表示規約に反すると、不動産公正取引協議会から警告を受けたり、違約金を求められたりするケースもあります。
不動産広告の表示規約を理解していないとNGワードを掲載してしまう恐れがありますので、広告出稿の際には使用してはいけない広告表現を確認しておく必要があります。
不動産広告で使用禁止の用語一覧
不動産公正取引協議会では、不動産広告で以下のような用語の使用を禁じています。
全く欠けるところがないこと、全く手落ちがないことを意味する用語
「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」など、物件の品質やサービス内容に欠点がないような表現を使うことはできません。
競争事業者の供給するもの、競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語
「日本一」「業界一」「超」「当社だけ」「他に類を見ない」「抜群」など、自社が競争事業者よりも優位に立つことを意味する表現を使うことはできません。
一定の基準により選別されたことを意味する用語
一定の基準により選別した事実がない場合、「特選」「厳選」などの表現を使うことはできません。
最上級を意味する用語
「最高」「最高級」「極」「特級」など最上級を意味する表現については、それを裏付ける合理的な資料と、根拠となる事実を表示する場合しか使用することはできません。
著しく安いという印象を与える用語
「買得」「掘出」「土地値」「格安」「投売り」「破格」「特安」「激安」「バーゲンセール」「安値」など物件価格や賃料などが安い印象を与える表現についても、それを裏付ける合理的な資料と、根拠となる事実を表示する場合しか使用することはできません。
より詳しい情報は、下記資料ダウンロードボタンよりお問い合わせください。
表示規約違反の判断基準は?
上記で紹介した用語以外にも、不動産広告の表示規約に反する用語は数多く存在します。規制対象となる表示の判断基準は、「消費者が誤認する恐れがあるかどうか」です。
不動産会社としては、不動産を魅力的にみせる表現を使いたいところですが、実際の不動産よりも優良にみえるような表示をすると消費者が誤認してしまう恐れがあります。
実際に消費者が誤認したという事実がなくとも、誤認する恐れがある表示はそれだけで規制対象となるため、十分に注意しましょう。
表示規約を違反した場合どうなるか?
表示規約の違反になるケースは、禁止用語の使用だけではありません。
物件種別ごとに定められている表示項目の不足や虚偽・誇大表示をする不当表示の他(禁止用語の使用もここに該当します)、実際に取引できない物件を掲示するおとり広告などがあります。
違反で特に多いものはおとり広告で、実際の物件は契約済みで取引できない状態にも関わらず、HPで掲載取り下げなどの更新を行わないまま放置していた、というケースもあります。
この場合も「忘れていただけで、おとり広告をするつもりはなかった」といった申し立てはできません。
その他、契約や来場時にプレゼントする景品にも不動産業界独自のルールがあり、これが守られていない場合も違反となります。
違反した場合はどうなってしまうかは、前述した通り、警告・違約金課徴といった罰則が課せられますが、主なものをご紹介します。
- 厳重警告・違約金課徴
- 義務講習会受講
- ポータルサイト掲載停止
よく見られる罰則が上の厳重警告・違約金課徴と義務講習会受講です。
違約金の金額は50万円以下と言われていますが、警告に従わなかった場合は、500万円以下の違約金を課すこともあります。
さらにポータルサイト(SUUMO、HOME’S、athomeなど5サイト)に1ヶ月以上掲載停止も、違反事例で見かける罰則の一つです。
告知の手段が一つ使えないというのは、売却活動にも大きな影響を受けることになりますので、十分な注意が必要です。
また、違反した事例として、不動産公取のサイトにも掲載されます。
サイト掲載時には会社の名前は伏せられますが、度重なる違反で是正がないと判断された場合は社名も公表されることとなります。
会社の評判にも関わることになりますので、不当表示やおとり広告を使わないよう心がけてください。
不動産の公正規約に通じた会社を選ぶコツ
不動産を取り扱う広告会社は数多くありますが、不動産公正規約を知らないまま広告を発信している企業は少なくありません。
不動産公正取引協議会の主旨・目的に賛同する広告会社や広告媒体社・インターネットサイト運営社(者)は賛助会員として入会することができます。
入会はあくまで任意加入となるため、賛助会員にならなくても不動産広告の作成はできます。
しかし、賛助会員未入会ですと、公取協の定めている規約について知らないまま情報発信してしまうリスクもあります。
知らず知らずに規約に反してしまった、といった事態を避けるためにも、賛助会員となっている広告会社を探すのがいいでしょう。
各地区の不動産公正取引協議会では、賛助会員の名簿を公開しております。
各地区の不動産公正取引協議会では賛助会員へ向けた研修会(勉強会)なども定期的に行っており、違反事例などの情報なども届くことがあります。
賛助会員に入会している会社にお願いすることが、規約違反をしない広告を作る近道となります。
当メディアAdransを運営しているアド・コミュニケーションズも、近畿地区不動産公正取引協議会の賛助会員です。
重大な規約違反にならない広告の作成を心がけております。
一度お問い合わせください。
この表示・表記はダメ!要注意3選
この章では禁止事例についてのお話をさせていただきます。
実際、私たちが公取さんから聞いた話についてや、目に止まった広告についての事例です。
用語についての話以外もありますが、ぜひご覧のうえ、広告にお役立ていただければと思います。
テレワークルームの表示について
昨今のコロナ禍において、住まいに求めるものにも変化がありました。
出社を控えて、リモートワークが推奨されるようになりましたが、実際に自宅で仕事をしようと思っても落ち着いて仕事をする場所がない方も多いですよね。
そこで不動産広告においてよく見られるようになったのが、「テレワークルーム」という表現です。今まではウォークインクローゼットや納戸などにされていた2帖くらいのスペースにカウンターを設えただけの空間を、「テレワークルーム」と表現する広告を目にすることが多くなりました。
しかし、その表現はNGだったのです。本来建築基準法上で居室と認められていない非居室において、居室と同じような使用方法を提案することが表示規約違反になるとのことでした。
今回はコロナ禍において、あまりにも多くこういった広告が見られたため、表示規約違反である旨が周知されたのでしょう。
条件付宅地チラシに街並みパース
何がおかしいのか?と思われた貴方。実は複数区画の条件付宅地に街並みパースは使えません。
実際にチラシで見ることも多々あり、結構使われている会社様も多いかと思います。
この場合は、実際の宅地写真を使うといいでしょう。
街並みパースは全区画の建築確認が下りた新築物件において、使用することができます。
とはいえこれも、物件が完成するまでの間です。完成後は現地の写真をお使いください。
ちなみに、1区画のみの建物パースは、大きいサイズでなければ使用可能です。
「乗り換え時間は含まれておりません」
「××駅より○○駅まで特急利用で10分!」
上記のように、最寄駅から電車に乗って大きな駅へ向かう場合の所要時間を載せて、通勤などの好アクセスを表現するのは戸建て・マンションを問わずによく見られます。
その際、乗り換えや待ち時間を省いて、乗車時間のみを掲載していませんでしょうか?そして「乗り換え時間は含みません」と注釈文を小さく入れてませんか?
この表記は以前は問題なかったのですが、2022年9月に公取規約が改正されてからは不当表示となりました。
改正後の規約では、乗車時間は朝ラッシュ時に限定され(日中の時間は朝ラッシュと併用でのみ使用可能)ます。
さらに乗り換えや待ち時間を含んだ時間で、最多本数の時間や最短時間〜最長時間などの表記にすることが決められました。
昔のHPをそのままにしている場合は、新規約に準えて変更を行なってください。
私たちは、新しく周知された規約や従来からの変更点などにも気をつけながら、不動産広告のご提案をしております。
※注:公取チェックのみの業務は承っておりません。
不動産広告公取ルールの診断チェックリストをご用意しております。是非ご活用ください。